【レポート】2026年2月8日 三浦綾子文学講演礼拝

礼拝

参加者のコメント

人間の罪について深く語られ、大自然の中にも土の奥底に一年中凍ったままの層があり、その上で花や実がなるという描写が印象的でした。人間もまた、表面は普通に見えていても、心の奥底には冷たい氷のような罪がなかなか溶けずに残っていることが示されています。太平洋戦争の時代も、樺太(現ロシア領のサハリン)での生活も、そして人がまだ住んでいなかった太古の昔から、エゾカンゾウ(北海道に生える多年草)は毎日のように一面に咲き、利尻富士は変わらず美しい姿を見せてきました。そのように、神は人間もまた美しく、神のかたちに似せて創ってくださったのだと感じました。与えられた時代と環境の中で、私はどのように神を信じて生きることができるのかを深く考えさせられる作品でした。

レジュメ

三浦綾子文学講座 「天北原野」②

1、罪について

①固く凍っている部分

「「加津夫君、このツンドラはねえ、四、五尺掘ると、夏でも凍っているんだよ」「ふーん、じゃ、今も凍っているの」「そうさ。年中凍っているのさ。年中凍っている地の上でも、苺も実れば、フレップも実るのさ。少しでも地の解けている表面ではね」貴乃は心が刺されたような気がした。自分の心にも、完治に対して固く凍っている部分がある。」(「ツンドラ」一)

②死んでくれたら

「 「お兄さん、その後お姉さんはどうなんですか」「あんな奴なんか、なおらなくてもいい。俺はここに来て、毎日こうやっているだけで幸せだ」・・・「そんなことを言ったら、罰が当たりますよ」「いや、ほんとの話さ、お貴乃さん。わしはね、時々、あいつが死んでくれやしないかと思うことがある」「まあ!」と言ったが、自分も幾度か完治が死んでくれたらと思ったことを、貴乃は思い出す。」(「煤」一)

「あなたは、他人をさばくことによって、自分自身を罪に定めています。さばくあなたが、それと同じことを行っているからです。」(ローマ2:1)

③罪に時効はない

「 「完治兄さん、兄さんは何もわかんないのね。何も心が痛んでいないのね。孝介が帰って来たら、万々歳だなんて。 ・・・」・・・「今にわかる日が来るわ。兄さんの犯した罪に時効がないってことも」ぎょっとするような、冷たい声だった。」(「水脈」一)

④自分が殺した

「完治の罪を許してくれというあき子の手紙を、完治は読むべきだと思った。再び孝介は手紙を読み返した。読み終わった孝介は声を殺して泣いた。(自分が、貴乃に対して、変わらぬ思いを持ちつづけたことが、あき子を殺したのだ)一人の人を愛しつづけるということは、孝介にとっては、真実な美しい生き方のつもりだった。が、その愛の故に、妻のあき子を殺してしまったのだ。「先生、わたしは淋しかったのです」と書いたあき子の、十年間の淋しさが孝介に今ずしりとのしかかってくるようであった。「あき子・・・あき子、許してくれ」孝介は枕に顔を埋めて泣いた。」(「水脈」三)

2、戦争について

①命は大事なもの

「 「戦争ってなあ、そんな歌のような甘いもんじゃないんだぞ。命がけのことなんだぞ。お前たち、もう十七だろう。あと三年したら、いやでも応でも兵隊検査だ。みんな戦争に引っ張られて、大変な目に遭うんだ。こんなことを言うと、ぼくも監獄に入れられるかも知れないが・・・」加津夫たちは戦争にいくことを名誉なことだと思っている。が、反ばく出来ない何かが、その教師の語調にはあった。不満そうに口を尖らせながらも、生徒たちは黙っていた。とその時、思いがけなく教師の両眼から涙があふれた。「お前たち、二十一や二で、死んじゃいかんぞ。命は大事なもんだ」言ったかと思うと、ぷいと顔をそむけた。」(「煤」四)

②軍隊は大がかりなやくざ

「音信不通だった加津夫は南方の島に戦っていたのだ。が、幸い終戦直前、転戦のため九州に上陸したという。「そうか。弥江も千代も死んだかい」加津夫は話を聞いて、やや黙然としていたが、「しかしな、母さん、この戦争じゃみな死んだよ。おれの部隊でもたくさん死んだ。長崎でも広島でも、原爆でそりゃあ凄いやられ方だったぜ。大阪も東京も名古屋も、仙台も、目ぼしい街はみな焼け野原さ。戦争ってのは、殺し合いだからな。ま、おれに言わせたら、軍隊ってのは、大がかりなやくざだな。何のかのと言ったって、殺し合いするのは暴力団と同じよ。国のためだなんて言ったって、馬鹿馬鹿しくて。こんな時に生まれ合わせたのが不幸だったと、諦めるより仕様がねえや」畳の上に大の字にひっくり返って、そう言った加津夫のまなじりから、涙が流れた。」 (「海の墓」三)

③命さえなくなった

「「何を怒っているの?」尋ねる貴乃に、「映画さ、映画の題名が気に食わねえんだ」と、どかりと炉ばたに坐りこんだ。・・・「いいかい母さん、『我が青春に悔なし』だとさ。わが青春に・・・え? そんな題をよくもつけたもんだ。おれの友達だって、弥江たちだって、みんな青春を棒にふってしまった。悔いようにも、命さえなくなったんだ」そう言ったかと思うと、肩をふるわせて加津夫は号泣した。」(同)

3、人生について

①土台が大事

「ふっと、父の兼作の言葉が思い出される。「な、お貴乃、建物は土台が大事だ。どんな立派な材料を使おうと、ていねいな細工をしようと、土台がゆるんでいりゃあ、その家はすぐにぐらつく。風が吹きゃ倒れる。土台というものは大切なもんだ。人間の生活も、真実という土台の上に建てなきゃなあ」」(「貯炭ストーブ」一)

「その土台とはイエス・キリストです。」(Ⅰコリント3:11)

「だから、わたしのこれらのことばを聞いてそれを行う者はみな、岩の上に自分の家を建てた賢い人に比べることができます。雨が降って洪水が押し寄せ、風が吹いてその家に打ちつけたが、それでも倒れませんでした。」(マタイ7:24、25)

「教会は、真理の柱また土台です。」(Ⅰテモテ3:15)

②教会とは

「と、オルガンの音が流れて来た。向かいの教会からである。・・・あき子は耳を傾けながら、教会の尖塔に目をやる。十字架が光っている。あき子はじっとオルガンの音色に耳を傾ける。それは、今まであき子の知らなかった世界の音色である。・・・(教会って、どんな人が行っているのかしら)」(「犬の声」一)

「すべて、疲れた人、重荷を負っている人は、わたしのところに来なさい。わたしがあなたがたを休ませてあげます。」(マタイ11:28)

③耐える

「しかし、貴乃は自分自身に「耐えよ」と命じた。今まで貴乃は、只耐えに耐えて生きて来た。耐えることが貴乃の生き様だった。怒りも、苦しみも、悲しみも、それらすべてを、じっと一人の胸に耐えて生きて来た。・・・(耐えなければいけないんだわ。わたしは人間だから)貴乃は心の中で思う。・・・(何のために、こんなに耐えるのか)そう思ったことがある。それは、ある時には自分のなすべきことだからであり、ある時は人の幸せを思うからであった。」(「怒涛」二)

④人間の美しさ

「貴乃はふと、戦争のあった日々も、樺太に生きていた毎日も、いや、人のまだ住まなかった太古の昔から、この原野には、毎日エゾカンゾウが一面に咲き、あの利尻富士はあのように美しかったのかと、深い感動を覚えた。・・・この与えられた自然にふさわしく、人間もまた美しくつくられたのではなかったか。」(「海の墓」六)

「初めに、神が天と地を創造された。・・・神は人をご自身のかたちとして創造された。神のかたちとして彼を創造し、男と女とに彼らを創造された。」(創世記1:1、27)

「私たちはみな、・・・栄光から栄光へと、主と同じかたちに姿を変えられて行きます。これはまさに、御霊なる主の働きによるのです。」(Ⅱコリント3:18)