【レポート】2023年11月19日(日) 三浦綾子文学講演礼拝

10時~ 礼拝・講演

参加者のコメント

三浦綾子さんが多くの作品で語っている「人間はみな同じだ」というメッセージに対して、本当にそうだと思えるか?知らないうちに差別していないか?と自分に問いかける必要があると感じました。

レジュメ

三浦綾子文学講座 「海嶺(下) 」

1、罪のざんげ
「ゼネラル・パーマー号は今、アフリカ大陸とベルデ岬諸島との間を通過したところであった。左手前方に、小さな島が現れた。・・・ふと見るとフェニホフ牧師が、その島のほうをじっと見つめている。 ・・・と、フェニホフ牧師は指を組み、首を垂れて何か祈りはじめた。

・・・「フェニホフ先生、何をお祈りになっていらしたの」ルイスが無邪気に尋ねた。フェニホフ牧師は・・・ 「その島が、有名なゴレ島です」 ・・・「あそこは・・・有名な奴隷貿易の島です。十七世紀の初めから、あの小さな島で、たくさんの血が流されました」牧師は吐息をついた。 ・・・ 「では、フェニホフ先生は、売られた奴隷のために祈っておられましたの?」尋ねたルイスに、牧師は言った。「そうです。そして吾々白人の罪をざんげしていました」 」 (「奴隷海岸」一)
「私は今、あなたのしもべイスラエル人のために、昼も夜も御前に祈り、私たちがあなたに対して犯した、イスラエル人の罪を告白しています。まことに、私も私の父の家も罪を犯しました。 」 (ネヘミヤ1:6)
「「けどな音、わしらインデアンのスレーブやったのを、ドクター・マクラフリンが買い取ってくれたやろ。けど、わしらをスレーブにはせんかったわな。そして、こうして高い金を出して、日本に戻してくれるわな。その同じ国で、スレーブがいた。わからんな」「ほんとやなあ。なあ、久吉、いつかの日曜日、パーソン(牧師)が説教したやろ。人間は誰も同じやって。したら、みんなうなずいていたわな。けど、スレーブは、同じ人間ではないって言うたわな。あの顔の赤い男がな。そしてそれに賛成しているのが何人かいたわな。わからんなあ」

・・・「あ、そうか、わかった久吉。パーソンが、どんな人間もみな同じやと教えたのは、みんながそれをようわかっていないからや。王様も金持ちも、貧乏人も同じやと言うのは、そう言わねばわからんから言うて聞かせたのとちがうか。またエゲレスの人も、よくわかってはおらんのや」

・・・その夜、夕食が終わってから、音吉はフェニホフ牧師に尋ねた。「先生、スレーブとイギリス人も、やはり同じ人間ですか」牧師はあたたかいまなざしを音吉に向け、 「大変大事な質問です。神の前に、只の一人もちがう人間はおりません。一人残らず同じ人間です」「ではどうして、アフリカ人を売ったり買ったりしていたのですか」「恥ずかしいことです。説教を自分の問題としてではなく、聖書の中の物語として聞いている人が多いからです。」フェニホフ牧師は悲しそうに答えた。」(同)

2、私達の使命
「ギュツラフが言葉をつづけた。「このヨハネという人は、ジーザス・クライストの弟子です。大そう長生きをした人です。綽名を雷の子と言われたほどの、激しい性格でした。激しい性格でも、柔和な性格でも、神が使ってくださる時、人は立派な働きをします。今、神は、あなたがたを使おうとしておられるのです。さあ、感謝いたしましょう」

・・・ギュツラフは祈りはじめた。「聖なる御神、いよいよ今日よりヨハネ伝の和訳に取りかかります。今日までの御導きを感謝申し上げます。まことに小さく、弱い僕に、このような尊い仕事を与えてくださった御神を、心より讃えます。どうか終わりまで、あなたの聖なる御力を持って、助けてくださいますように。あなたは、不思議な備えをもって、ここにいる三人を今日までお守りくださいました。そして、共に聖書和訳の仕事につかせてくださいました。三人は、今、日本の国の掟のために、この仕事を恐れておりますが、どうか平安を与えてください。この仕事が、どんなに光栄あるものかを三人に知らしめてください。

・・・日本の国が、天地の創造者、真の御神を受け入れ、御子による贖いを受け入れる日が来ますように、どうか御導きください。和訳を始めるにあたり、我らの罪のために代わって十字架にかかられた御子キリストの御名によって、お祈りいたします」 」(「ロゴス」五)
「しかし、聖霊があなたがたの上に臨まれるとき、あなたがたは力を受けます。そして、エルサレム、ユダヤとサマリヤの全土、および地の果てにまで、私の証人となります。」(使徒1:8)

3、福音とは
「ギュツラフの祈りが終わり、音吉が案じていたように、和訳の聖書が読み上げられた。

・・・ 「アノヒトハ ワシノツミユヱ ミガハリニタツ。ワシドモバカリワナイ タダシミナセカイユヱ。(彼は、わたしたちの罪のための、あがないの供え物である。ただ、わたしたちの罪のためばかりではなく、全世界の罪のためである。ヨハネ第一の手紙二章二節)」

・・・「にんげん、罪あります。誰も。人をにくみました。うらみました。これ罪です。そしりました。心の中に。わたしたちの心、毎日毎日、罪を持ちます。罪、たくさんになります。罪のない日、ありません。この罪持って、にんげん死にます。それゆえ、ゲヘナ(地獄)に行きます」

・・・「罪の人、ほろびます。けれど、罪の人ほろびない道あります。それは、ジーザス・クライストです。この人、わたしたちの身代わりです。わたしたち助かります。ジーザス・クライスト、みんなの罪の身代わりになりましたから、助かります。にんげんは、このことだけ、忘れてはなりません。 」 」 (「合流」六)

4、クリスチャンとは
①感謝の人
「キングたちは、江戸湾から逃れ出た時に言っていた。「あんな近くから一時間も激しく攻撃されたのに、只一人の怪我人も出さずにすみました。これこそまことに奇蹟です。神に感謝を捧げましょう」そう言って、キングたちは神に感謝の祈りを捧げていた。音吉はその時の驚きを忘れない。どんな時にあっても、先ず感謝すべきことを見つけ出すことのできるキングたちの生き方に驚いたのだ。」(「ああ祖国」十)
「すべての事について、感謝しなさい。これが、キリスト・イエスにあって神があなたがたに望んでおられることです。」(Ⅰテサロニケ5:18)
「神を愛する人々、すなわち、神のご計画に従って召された人々のためには、神がすべてのことを働かせて益としてくださることを、私たちは知っています。 」 (ローマ8:28)

②愛の人
「こうして岩吉は、役人や土地の者たちの前に、漂流の辛苦を一心に語った。それと共に、ハドソン湾会社の示してくれた親切や、ギュツラフ、キングたちが親身になって自分たちを日本まで送り届けてくれるに至ったいきさつを、語り伝えたのである。

・・・「ふーむ、それにしてものう、見も知らぬ異国の人たちが、おはんたちをそいほどに親切に扱ってくれたとか。各々方、その異人たちは、おいどんと同じ人間でごわすとか」「ほんのこつ、おいどんも感じ入って聞きもしたが、それは人間よりも、もっと優れた何者かではごわはんか」「まことじゃて。人間よりも、神か仏に近い者ではなかか。並の人間にはとても出来るこつではなか」」(「ああ祖国」十四)
「キリストは、私たちのために、ご自分のいのちをお捨てになりました。それによって私たちに愛がわかったのです。ですから私たちは、兄弟のために、いのちを捨てるべきです。」 (Ⅰヨハネ3:16)
「私たちはみな、 ・・・栄光から栄光へと、主と同じかたちに姿を変えられて行きます。これはまさに、御霊なる主の働きによるのです。 」 (Ⅱコリント3:18)

③確信の人
「 (・・・わしは、生みの親にさえ捨てられた。今度は国にさえ捨てられた) ・・・やや経ってから、岩吉はぽつりと言った。「・・・そうか。お上がわしらを捨てても・・・決して捨てぬ者がいるのや」その言葉に音吉は、はっとした。(ほんとや、ハドソンベイ・カンパニーのドクター・マクラフリンのようにわしらを買い取って、救い出してくれるお方がいるのやな)」(「ああ祖国」十七)
「わたしは決してあなたを離れず、また、あなたを捨てない。 」 (へブル13:5)
「恐れるな。わたしがあなたを贖ったのだ。 ・・・あなたはわたしのもの。 ・・・わたしの目には、あなたは高価で尊い。だからわたしは人をあなたの代わりにし、 ・・・」 (イザヤ43:1、4)
「けれども、私たちの国籍は天にあります。」 (ピリピ3:20)